この記事は一般的な医療保険の考え方をもとにまとめています。免除の条件や別表の番号は商品によって異なります。ご自身の契約については、約款と保険会社にご確認ください。

ひざに人工関節を入れます。保険料は免除になりますか。

原因が病気か事故かで答えが変わります。約款の別表を見ていきましょう。
- 人工関節で保険料が免除される条件
- 病気と事故で判定が変わる理由
- 手術給付金と入院給付金の目安
- 入れた後に医療保険へ入れるか
人工関節の手術が決まると、お金の心配が出てきます。
人工関節を入れても、保険料免除になるとは限りません。原因によって、見る表が変わるからです。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。約款の文面をもとにお伝えします。
人工関節で保険料が免除されるかは原因で決まる

同じ人工関節でも、答えは2つに分かれます。まず全体像を整理しましょう。
病気が原因だと免除は難しい
変形性関節症のように病気が原因の場合、保険料免除まではたどりつきにくいのが実情です。
一方で転倒や交通事故のけがが原因なら、免除の対象になることがあります。
同じ手術でも、きっかけと約款の世代で結論が変わってしまうわけです。
約款には2つの別表がある
保険料免除の条件は、約款の別表という一覧で決まっています。
病気のときは高度障害状態の表、不慮の事故によるけがのときは身体障害の状態の表を見ます。ある商品では、それぞれ別表3と別表4という番号でした。
番号は商品によって違うので、お手元の約款で確かめてください。
手術給付金とは判定の仕方が別
手術給付金のほうは、原因が病気でもけがでも請求できます。
免除だけが別の表で判定される点に注意しましょう。給付金が出たから免除もされる、という関係ではありません。
事故が原因でも約款の世代で変わる

けがが原因のときに見る表には、人工関節がはっきり書かれていました。ところが最近は様子が違います。
古い約款の備考には人工関節とある
ある生命保険会社の約款には、こう書かれていました。
「関節の用を全く永久に失ったもの」とは、関節の完全強直で、回復の見込のない場合または人工骨頭もしくは人工関節をそう入置換した場合をいいます。
人工関節を入れた状態が、関節の用を失ったものとして扱われるわけです。
条件は同じ脚の2つの関節
いま引用したのは備考です。実際に該当するかどうかは、別表の項目に並んだ文言で決まります。
1下肢を足関節以上で失ったかまたは1下肢の用もしくは1下肢の3大関節中の2関節の用を全く永久に失ったもの
同じ脚のまた関節・ひざ関節・足関節のうち、2つに人工関節を入れた状態です。
ひざ1つだけでは足りません。右ひざと左ひざに1つずつ入れた場合も、同じ脚ではないので当てはまらない読み方になります。
けがが原因の免除には、事故の日から180日以内といった期間の条件も付くでしょう。
新しい約款ではこの一文がない
ところが、新しい約款を開くと様子が違います。「関節の用を全く永久に失ったもの」の説明から、人工骨頭や人工関節に触れた一文がなくなっているのです。
残るのは関節の完全強直だけになります。この約款では、人工関節を入れても免除の対象になりません。
加入した時期と商品で結論が分かれるので、自分の約款の備考を見るしかありません。古い保険を残すか迷う方は古い保険は解約していい?をご覧ください。
変形性関節症が原因だと免除までは届きにくい

人工関節を入れる原因で一番多いのは、変形性関節症という病気です。このとき見る表は、けがのときとは別物になります。
病気のときは高度障害状態の表を見る
病気が原因の免除は、高度障害状態に該当したときだけです。
両眼の視力を永久に失う、常に介護を要するといった、きわめて重い状態が並んでいます。
3つの関節すべてが固まった状態が条件
同じ約款の、高度障害状態のほうの備考です。
「上・下肢の用を全く永久に失ったもの」とは、完全にその運動機能を失ったものをいい、上・下肢の完全運動麻ひ、または上・下肢においてそれぞれ3大関節(上肢においては肩関節、ひじ関節および手関節、下肢においてはまた関節、ひざ関節および足関節)の完全強直で、回復の見込のない場合をいいます。
足なら、また関節とひざ関節と足関節の3つすべてが固まった状態です。
人工関節は完全強直にあたらない
人工関節を入れる目的は、痛みを取って動きを取り戻すことです。
動く関節になるのですから、完全強直にはあたりません。高度障害状態の備考に人工関節という言葉が出てこないのは、このためだと考えられます。
| 見る表 | どんなときに見るか | 人工関節の記載 |
|---|---|---|
| 高度障害状態の表 | 病気が原因のとき | 書かれていない |
| 身体障害の状態の表 | 不慮の事故によるけがのとき | 書かれている |
手術給付金は原因を問わず請求できる

免除の話は厳しめでしたが、給付金のほうは心配いりません。
人工関節置換術は公的保険の対象
人工関節を入れる手術は、公的医療保険が使える手術です。
公的保険の対象であれば、医療保険の手術給付金も対象になるのが基本です。どんな手術が対象になるかは手術給付金の対象になる手術・ならない手術にまとめました。
原因が変形性関節症でも、ここは問題なく請求できます。
倍率は商品によって変わる
手術給付金は、入院日額に倍率をかけて計算する商品が多くあります。
日額5,000円の契約なら、10倍で5万円、20倍なら10万円という計算です。
倍率は手術の種類と商品で変わります。金額を知りたいときは、証券か約款の一覧を見てみましょう。
入れ替えの再手術も対象になりうる
人工関節は、ゆるみや摩耗で入れ替えが必要になることがあります。
この再手術も、手術給付金の対象になるのが基本です。
ただし短い期間に同じ手術を繰り返すと、支払いが1回分にまとまる商品もあります。考え方は白内障手術と保険請求と同じです。
入院給付金と高額療養費でいくら戻るか

人工関節の手術は入院が長めになります。公的な制度と合わせて、お金の流れを見ておきましょう。
入院は2週間から1か月が目安
リハビリを含めるため、ほかの手術より入院が長くなります。
ひざで2週間から1か月、また関節で2週間から3週間という目安がよく示されています。
日額5,000円の契約で20日入院すれば、入院給付金は10万円です。支払われる条件は入院給付金の2つの条件と4つの事例をご覧ください。
窓口の負担は月10万円前後に収まる
窓口で払う金額は、高額療養費制度で上限が決まっています。
年収約370万円から770万円の区分なら、1か月の上限は85,800円に医療費の一部を足した金額です。
医療費が150万円でも、1か月の自己負担は約9万8,000円になります。計算のしかたは高額療養費制度とはにまとめました。
上限の外に残る費用もある
差額ベッド代と食事代は、高額療養費の対象外です。
退院してからの通院とリハビリにも、お金と時間がかかります。入院が長いぶん、収入が減る方もいるでしょう。
民間の医療保険で備えるのは、おもにこの部分です。
人工関節を入れた後に医療保険へ入れるか

手術のあとで保険を探す方も多いので、加入する側の話にも触れておきます。
告知書で必ず聞かれる
過去の手術と入院は、告知書の質問項目に必ず入っています。
人工関節の手術は、告知が必要だと考えてください。
条件が付いて加入できることもある
入れるか入れないかではなく、どんな条件が付くかが実際の論点です。
その関節を対象外にする部位不担保という条件が付くことがあります。保険料を上げたうえで引き受ける方法をとる会社もあります。
断られたからといって、どこも同じとは限りません。
書かずに加入すると後で困る
告知せずに加入すると、告知義務違反になります。
給付金が支払われないだけでなく、契約そのものが解除されることもあります。詳しくは告知義務違反はどうなるをご覧ください。
人工関節と保険のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から読んでみてください。
変形性関節症でも免除になる商品はあるか
三大疾病などで免除になる特約を付けていれば、別の条件で判定されます。
標準で付いている免除とは別の仕組みです。保険料免除特約は必要かで違いを整理しています。
左右を別々に手術したら2回出るか
別の関節の手術なので、それぞれ対象になるのが基本です。
ただし同じ手術を短い期間に繰り返すと、1回分になる商品があります。
免除になったら保障は続くか
続きます。保険料を払わないまま、入院や手術の保障は残ります。
解約したわけではないので、契約はそのままです。
身体障害者手帳は保険に関係するか
手帳と給付金の支払いは、別々の制度です。
手帳があるから給付金が増えるという関係はありません。保険会社の判断は、あくまで約款の内容で決まります。
手術から時間がたっていても請求できるか
約款でさかのぼれるのは3年ですが、必要な書類がそろえば、3年以上たっても請求できるのが基本です。
まずは保険会社に連絡して、何が必要かを聞いてみましょう。
まとめ

要点を振り返りましょう。
- 病気が原因だと保険料免除は難しい
- 新しい約款では事故が原因でも難しい
- 条件は同じ脚の2つの関節
- 手術給付金は原因を問わず請求できる
- 入院は2週間から1か月が目安
- 窓口の負担は月10万円前後に収まる
人工関節イコール保険料免除ではありません。原因がどちらかで、結論が分かれます。
お手元の約款の備考に人工関節という言葉があるか、まず確かめてみてください。

