この記事は一般的な医療保険の考え方をもとにまとめています。給付の条件は商品によって異なります。ご自身の契約については、約款と保険会社にご確認ください。

腕を骨折してギプスをしています。保険は請求できますか。

入院したかどうかと、手術の種類で決まります。順番に見ていきましょう。
- 骨折で給付金が出る人と出ない人の違い
- 整復術が対象外になる理由
- ギプスだけのときに起きること
- 請求を忘れやすい2回目の手術
骨折は、保険の請求で結果が大きく分かれるけがです。
同じ骨折でも、1円も出ない人と数十万円を受け取る人がいます。その差は、けがの重さではありません。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。どこで分かれるのかをお伝えします。
骨折で医療保険から出るかは2つで決まる

まず全体像です。医療保険の判定は、思っているよりずっと単純にできています。
入院したかどうか
1つめは、治療のために入院したかどうかです。
入院していれば、日数に応じて入院給付金が支払われます。通院だけで治した場合は、この給付金はありません。
観血手術をしたかどうか
2つめは、皮膚を切ってボルトやプレートを入れる手術をしたかどうかです。
この手術をしていれば、手術給付金が支払われます。していなければ出ません。
ギプスや整復だけでは出ない
入院もせず観血手術もしていなければ、医療保険の主契約からは何も出ません。
ギプスをしていても、腕を吊っていても、この結論は変わりません。ここが一番ご相談の多いところです。
ただし、けがの特約を付けている場合は別です。通院だけでも対象になる可能性があります。
| 治療の内容 | 入院給付金 | 手術給付金 |
|---|---|---|
| 入院してボルトを入れた | 出る | 出る |
| 日帰りでボルトを入れた | 出ない | 出る |
| 入院して整復とギプス | 出る | 出ない |
| 通院でギプスだけ | 出ない | 出ない |
入院給付金は治療目的の入院だけ

入院していれば必ず出る、というわけでもありません。条件を確認しておきましょう。
治療のための入院が条件
対象になるのは、治療を目的として病院に入院した場合だけです。
骨折の治療で入院したのであれば、ここは問題になりません。手術の予定が組めず待機していた期間も、治療のための入院として扱われます。
検査だけの入院は対象外
一方、検査だけが目的の入院は対象になりません。
家族の付き添いで泊まった日も、もちろん対象外です。支払いの判定は、あくまで被保険者本人の治療かどうかで行います。
くわしい条件は入院給付金の2つの条件と4つの事例にまとめました。
金額は日数と日額で決まる
入院給付金は、日額に入院日数をかけて計算します。
日額5,000円の契約で14日入院すれば、7万円です。足の骨折なら2週間から1か月の入院になることもあります。
整復術は対象外で観血手術は対象

ここがこの記事で一番お伝えしたい部分です。同じ骨折の処置でも、扱いがはっきり分かれます。
徒手整復は手術として扱われない
ずれた骨を手で元に戻す処置を、整復術といいます。
整復術は、医療保険の手術給付金の対象になりません。ギプスを巻いて固定する処置も同じ扱いです。
痛みも時間も相当なものですが、保険のうえでは手術と呼ばない取り扱いになっています。
ボルトやプレートを入れれば対象
皮膚を切り開いて骨を固定する手術は、観血手術と呼ばれます。
こちらは手術給付金の対象です。ボルト、プレート、髄内釘などを入れた場合が当てはまります。
診療明細書に観血的整復固定術と書かれていれば、まず対象と考えて大丈夫です。
古い保険も新しい保険も同じ
医療保険には、手術の種類を88種類に限る古いタイプと、公的保険の手術料に連動する新しいタイプがあります。2つのタイプの違いは古い保険は解約していい?で比べています。
整復術が対象外になる点は、どちらのタイプでも変わりません。タイプの違いは手術給付金の対象になる手術・ならない手術で解説しています。
けがを縫う処置の扱いは、けがを縫う手術は給付金が出ない?をご覧ください。
ギプスだけのときは特約しだい

通院でギプスを巻いただけの方が、一番納得しにくいところだと思います。事実を正確にお伝えします。
みなし通院の取り扱いはない
医療保険には、ギプスを着けている期間を通院とみなす取り扱いはありません。
対象になるのは、実際に病院へ行った日だけです。
けがの特約があれば通院でも出る
そのうえで、けがを対象にする特約を付けている場合は話が変わります。
入院や手術をしていなくても、通院しただけで給付金が出る可能性があります。災害通院特約や傷害特約といった名前が付いていることが多いです。
保険証券の特約欄に、けがや災害という言葉がないか見てみてください。
傷害保険や共済も確認する
けがだけを対象にする傷害保険や共済には、ギプスのみなし通院が定められていることが多くあります。
自転車保険、クレジットカードの付帯保険、学校の共済なども見てみましょう。お子さんの骨折なら、学校を通じた共済がよく使われます。
けがの保障は、思わぬところに付いていることがあります。
金属を抜く手術は保険のタイプしだい

骨折の請求で一番多い取りこぼしが、ここです。
古いタイプの保険では対象外
入れたボルトやプレートは、1年ほどしてから抜くことがあります。これを抜釘といいます。
88種類タイプの古い医療保険では、抜釘は手術給付金の対象外です。88種類の一覧に入っていないためです。
手術料算定タイプなら、免責手術に入っていなければ対象になります。
入院給付金では注意がいる
対象になるタイプでも、入院給付金のほうには注意したい落とし穴があります。
くわしくは抜釘手術は医療保険で請求できる?入院給付金の落とし穴にまとめました。
1年後だと忘れやすい
最初の手術から時間が空くため、請求そのものを忘れる方がとても多いです。
手帳やスマホに、抜釘の予定と保険会社の連絡先を控えておきましょう。
窓口でいくら払うことになるか

給付金の話とあわせて、出ていくお金も見ておきましょう。
高額療養費で上限がある
入院して手術をすると、窓口の支払いはまとまった額になります。
ただし1か月の自己負担には上限があり、年収約370万円から770万円なら9万円前後です。
計算のしかたは高額療養費制度とはをご覧ください。
上限の外に残る費用
差額ベッド代と食事代は、上限の対象外です。
利き手を骨折した方や、足を折って通勤できない方は、収入が減ることもあります。
診断書代は自分で払う
請求に必要な診断書の費用は、自己負担になるのが一般的です。
5,000円前後かかるため、受け取る給付金が少ないと手元に残らないこともあります。請求の前に、いくら出る契約かを確かめておきましょう。
骨折と保険のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から読んでみてください。
ギプスの期間は通院日数に入るか
医療保険では入りません。実際に病院へ行った日だけが通院日です。
傷害保険や共済では、みなし通院として扱われることがあります。
医療保険でも、けがの特約を付けていれば通院した日は対象になりえます。
子どもの骨折でも同じか
判定のしかたは同じです。お子さん本人が被保険者の契約から支払われます。
学校の共済や自治体の制度も確認してみましょう。
何か所も折ったら何回分出るか
手術ごとに判定するのが基本です。
ただし同じ日に2つの手術を受けた場合は、1回分にまとまることがあります。くわしくは同じ日に2回手術したら手術給付金は?をご覧ください。
転んだ自分の不注意でも出るか
出ます。医療保険は原因が病気でもけがでも、同じ条件で判定します。
自分の不注意かどうかは関係ありません。
何年も前の骨折でも請求できるか
約款でさかのぼれるのは3年ですが、必要な書類がそろえば、3年以上たっても請求できるのが基本です。
まずは保険会社に連絡して、何が必要かを聞いてみましょう。
まとめ

要点を振り返りましょう。
- 分かれ目は入院と観血手術の2つ
- 整復術は古い保険も新しい保険も対象外
- ボルトやプレートを入れれば対象
- ギプスだけならけがの特約しだい
- 傷害保険や共済なら出ることがある
- 抜釘は保険のタイプで結論が変わる
骨折の請求で損をしないために、まず診療明細書の手術名を見てください。
観血的整復固定術と書かれていれば対象です。整復術だけなら、けがの特約や共済を探しましょう。

