この記事は生命保険文化センターの公表資料と保険法をもとにまとめています。細かい取り扱いは商品や保険会社で異なるので、ご自身の契約については約款か保険会社にご確認ください。

加入のときに通院していたのを書き忘れました。もう手遅れでしょうか。

気づいた時点で言い直せます。黙っているより、そのほうがずっと安全です。
- 告知を書き忘れた気がする人
- 2年たてば大丈夫か知りたい人
- 持病があって加入をためらっている人
- 違反と言われて納得できない人
告知義務違反という言葉には、必要以上に怖いイメージがついています。
違反があっても、保険金が支払われる場合はあります。知らないまま諦めてしまう方が本当に多いところです。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。正しい線引きをお伝えします。
告知義務とはどこまで伝えるものか

まず、何をどこまで伝えるものなのかを整理します。ここを誤解したまま加入している方が少なくありません。伝える相手にも決まりがあります。
聞かれたことに答える義務
何でも自分から申し出る必要はありません。
告知書に書かれた質問に、事実をありのまま答えるのが告知義務です。過去の傷病歴や治療期間、今の健康状態、現在の職業などが聞かれます。
質問されていないことまで調べて書く必要はないということです。
伝える相手は告知書か指定の医師
ここは見落とされがちな決まりになります。
告知する相手は、保険会社に出す告知書か、保険会社が指定した医師です。この2つ以外に伝えても、告知したことにはなりません。
書面に残るかどうかが、あとで効いてきます。
営業職員への口頭は告知にならない
そして、これが実際のトラブルでいちばん多い形です。
営業職員や代理店の担当者に口で話しても、告知にはなりません。生命保険面接士に伝えた場合も同じです。
担当者には話したのに、という食い違いはここから生まれます。
違反になるのはどんなときか

書き漏らしがあれば、すべて違反になるわけではありません。どういう状態だと違反とされるのか、逆に違反にならないのはどんな場合かを見ていきましょう。
故意または重大な過失
違反とされる条件は決まっています。
故意または重大な過失によって、事実を告知しなかったり事実と違う告知をした場合です。わざと隠した場合だけではありません。
この重大な過失という言葉が、判断を分かりにくくしています。
うっかり忘れも対象になりうる
悪気がなくても、対象になることがあります。
普通に注意していれば思い出せたはずの治療は、重大な過失とされることがあります。何度も通った病院などが典型です。
一方で、本当に自覚症状がなく受診の記憶もない場合は、扱いが変わります。
妨げられた場合は違反にならない
知っておきたい例外があります。
営業職員などから告知を妨げられたときや、告知しないよう勧められたときは、告知義務違反による解除はできない取り扱いです。書かなくていいですよと言われた場合がこれにあたります。
言われたままにしてしまったなら、その経緯も含めて保険会社に伝えましょう。
隠しても記録は残る

診察券を出さなければわからない、と考える方がいます。残念ながら、そうはいきません。調べる方法が用意されているからです。
カルテとレセプトの調査
請求の内容に疑わしい点があると、調査が入ります。
本人の同意を得たうえで、病院のカルテや健康保険組合に残る診療の記録を確認する流れです。いつ、何の病気で、どんな治療を受けたかが残っています。
記憶と記録が食い違えば、記録のほうが重く見られます。
病院の記録は何年も残る
記録の保管期間も長めです。
病院は診療の記録を5年ほど保管しています。数年前の通院でも、調べようと思えばたどれるということです。
この仕組みは、過去の請求を掘り起こすときにも役立ちます。
確認されるのは請求のとき
調査が入るタイミングにも特徴があります。
加入のときではなく、保険金を請求した段階で発覚するのがほとんどです。一番お金が必要な場面で判明します。
だからこそ、加入の時点できちんと伝えておく意味があります。
2年ルールの本当のところ

2年たてば大丈夫という話を聞いたことはないでしょうか。これは噂ではなく、約款に書かれた取り決めです。ただし例外があるので、そこまで含めて理解しておきましょう。
約款は2年で保険法は5年
期間には2つの決まりがあります。
| 決まり | 解除できなくなるまで |
|---|---|
| 保険法 第55条4項 | 契約の締結から5年 |
| 各社の約款 | 責任開始日から2年 |
法律は5年ですが、保険会社が約款で2年に短くしているという関係です。
2年以内に支払事由があれば別
ここが見落とされやすい例外です。
2年を過ぎていても、支払事由が2年以内に起きていれば解除されることがあります。発病や入院の時期で見るためです。
2年たったから安心、と単純には言えません。
詐欺と判断されると取消になる
もうひとつ重い例外があります。
違反の内容が特に重大な場合は、詐欺による取消として扱われることがあります。この場合は2年を過ぎた契約でも取消となり、保険金は支払われません。
解除より重い結果になるということです。
解除されても保険金が出る場合がある

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。違反があって契約が解除されても、保険金が支払われる場合があります。知らずに諦めてしまう方がとても多い部分です。
因果関係がなければ支払われる
判断の軸は、隠した病気と実際の出来事がつながっているかどうかです。
告知しなかった事実と支払事由に因果関係がなければ、保険金は受け取れます。生命保険文化センターもそう説明しています。
契約が解除されることと、保険金が出ないことは別の話なのです。
公表されている具体例
公式の例がわかりやすいので紹介します。
| 隠していた病歴 | 亡くなった原因 | 死亡保険金 |
|---|---|---|
| 慢性C型肝炎の通院歴 | その肝炎が原因の肝がん | 受け取れない |
| 慢性C型肝炎の通院歴 | まったく関係のない胃がん | 受け取れる |
同じ違反でも、原因によって結果は正反対です。
納得できないときの相談先
説明を受けても腑に落ちないことがあります。
その場合は、保険会社とは別の中立な窓口に相談できます。費用のかからない公的な仕組みです。
進め方は給付金が支払われないときにできることにまとめました。
告知を忘れたと気づいたら

では、書き忘れに気づいた場合はどうすればよいのでしょうか。放っておくのが一番よくありません。やることは意外と単純です。
連絡して告知し直す
生命保険文化センターが示している対応はこれだけです。
保険会社に連絡して、改めて告知をし直します。追加の告知を受けて、そのまま継続になることも、条件が付くこともあるのです。
黙ったまま請求の日を迎えるより、ずっと良い結果になります。
持病があっても入れる保険はある
そもそも隠す必要がないことも多いです。
持病があっても加入できる商品は増えています。部位を除く条件を付けて引き受けてもらえることもあります。
選択肢を知らないまま、隠す道を選んでしまうのがもったいないところです。
迷ったら加入前に相談する
書き方で迷ったときの対処も知っておきましょう。
これは書くべきか迷ったら、書いておくほうが安全です。判断に困ったら、加入する前に保険会社や専門家に聞いておきましょう。
共済との違いが気になる方は県民共済だけで大丈夫?足りない人の3条件もどうぞ。
告知義務違反のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
健康診断の再検査も告知するのか
告知書で聞かれていれば答える必要があります。再検査や精密検査をすすめられた事実も質問の対象になることが多いので、書面をよく読んでください。
市販薬を飲んでいるだけでも必要か
医師の診察や処方を受けていない市販薬は、通常は質問の対象になりません。迷ったら告知書の質問文をそのまま読み返すのが確実です。
解除されると払った保険料は戻るか
解除の場合は解約返戻金があれば支払われますが、払った保険料がそのまま返るわけではありません。詐欺による取消の場合は、さらに厳しい扱いになります。
違反は何年前までさかのぼるのか
告知書で聞かれている期間が基準です。過去5年以内の傷病歴を問う形が一般的で、期間の区切りは商品によって違います。
団体信用生命保険も同じか
住宅ローンの団信にも告知があり、考え方は同じです。団信と生命保険の関係は団信があれば生命保険はいらないで解説しています。
まとめ

要点を振り返りましょう。
- 告知は聞かれたことに答える義務
- 営業職員への口頭は告知にならない
- 約款は2年で保険法は5年
- 2年以内に支払事由があれば解除されることも
- 因果関係がなければ保険金は受け取れる
- 忘れに気づいたら告知し直す
告知は保険会社が疑うための手続きではありません。いざというときに確実に支払うための準備です。
隠したまま何年も不安を抱えるより、正直に伝えて落ち着いて持ち続けるほうが、結局は得をします。

