補償の条件は、契約している保険会社や商品によって異なります。この記事は一般的な例をまとめたものです。実際の可否は、ご加入の保険会社にご確認ください。

大雨で家が浸水しました。火災保険に入っていれば出ますよね。

水災の補償が付いているか、そして浸水の深さで変わります。順に見ていきましょう。
- 大雨で家が浸水した人
- 水災の補償を外そうか迷っている人
- 川や海の近くに住んでいる人
- 火災保険の保険料が上がった人
火災保険に入っていれば、浸水しても必ず出ると思っていませんか。
実は、水災の補償には支払いの条件があり、床下浸水では出ないことが多いのです。ここを知らないまま契約している方が多くいます。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。条件のしくみと、2024年に変わった保険料の決まり方をお伝えします。
水災で出る災害と出ない災害

まず、どんな被害が水災にあたるのかを整理しましょう。名前のとおり水による被害ですが、原因によっては別の保険の担当になります。同じように水につかっても、出るものと出ないものがあるということです。ここで全体の地図を持っておきましょう。
洪水や土砂崩れが対象
水災として扱われるのは、次のような災害です。
- 台風や豪雨による洪水や川の氾濫
- 高潮による浸水
- 大雨で下水があふれる内水氾濫
- 土砂崩れや土石流、落石
土砂崩れが水災に入るのは、意外に思われるかもしれません。大雨が引き金になる災害として、まとめて扱われています。なお雪が解けて起きた洪水は水災、雪の重みによる損害は雪災の扱いです。
地震と津波は対象外
同じ浸水でも、原因が地震だと話が変わります。
地震や噴火、それによる津波は火災保険では出ません。備えるには、地震保険を別に付ける必要があります。
雨が原因なら火災保険、地面の揺れが原因なら地震保険という分かれ方です。地震保険のしくみは地震保険は必要?火災保険では出ない損害と受け取れる額にまとめています。
車は自動車保険の担当
家の敷地に停めていた車も、火災保険では出ません。
火災保険の対象は建物と家財で、自動車はどちらにも入らないからです。車の被害は、自動車保険の車両保険で備えます。
家と車の両方が被害を受けたら、それぞれ別に請求することになります。
支払いには条件がある

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。水災は、補償が付いていれば必ず出るわけではありません。どの程度の被害だったかで線が引かれています。浸水したのに1円も出なかった、という相談が毎年あるのはこのためです。
2つのうちどちらかを満たす
一般的には、次のどちらかに当てはまることが条件になります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 損害の大きさ | 建物または家財に再調達価額の30%以上の損害 |
| 浸水の深さ | 床上浸水、または地盤面から45センチを超える浸水 |
再調達価額とは、同じものを新しく買い直すのに必要な金額のことです。その3割以上が損害になるというのは、かなり大きな被害になります。
床下浸水は出ないことが多い
ここが落とし穴です。
戸建ての1階の床面は、地盤から50センチほどの高さにあることが多くなっています。つまり床下浸水だと、45センチを超えないことが多いのです。
床下の掃除や消毒に費用がかかっても、条件を満たさなければ支払いの対象になりません。
支払い方は商品で違う
条件を満たしたあとの金額の出し方も、一通りではありません。
かかった損害の額をそのまま支払う商品もあれば、損害額の一定の割合までとする商品もあります。保険料が安い商品ほど、後者になりやすい傾向です。
契約する前に、どちらのタイプかを確かめておきましょう。
建物と家財は別の契約

もうひとつ、見落とされやすいのが契約の対象です。火災保険は建物と家財を別々に契約します。浸水では家財の被害が大きくなりやすいので、ここを外していると受け取る額が大きく変わります。証券で確かめておきましょう。
建物だけだと家電が出ない
建物の契約でカバーされるのは、床や壁、設備などです。
冷蔵庫や洗濯機、テレビ、家具は家財にあたります。家財の契約がなければ、これらが壊れても支払われません。
保険料を抑えるために家財を外している方は、意外と多くいます。
浸水は家財の被害が大きい
水は床から上がってくるので、被害を受ける順番が決まっています。
床に置いてある家電や家具から先にだめになります。買いそろえ直すと、まとまった金額になります。
水災を心配するなら、家財の契約こそ必要だと言えます。
証券で確かめる場所
手元の保険証券を開いて、2か所を見てください。
保険の対象が建物だけか、家財も入っているか。そして補償の一覧に水災の項目があるかどうかです。
賃貸の場合は建物が大家さんの契約なので、家財と借家人賠償が中心になります。くわしくは賃貸の火災保険を切り替えて年6,500円節約した話をご覧ください。
2024年10月から保険料が5区分に

火災保険料が上がったと感じている方も多いと思います。2024年10月から、水災の保険料の決め方が大きく変わりました。住んでいる場所によって差がつくようになったのです。仕組みを知っておくと、見直しの判断がしやすくなります。
市区町村ごとのリスク区分
それまで全国一律だった水災の保険料が、地域ごとに分かれました。
洪水のハザードマップや過去の事故の統計、地形のデータをもとに、市区町村ごとに区分1から区分5までが決められています。区分1がもっとも安く、区分5がもっとも高い設定です。
浸水しにくい地域の方にとっては、負担が軽くなる変更でもあります。
全国平均で13パーセントの引き上げ
同時に、保険料の目安となる数値も引き上げられました。
全国平均で13.0パーセントの引き上げという、過去に例のない幅です。自然災害による支払いが増えていることが背景にあります。
更新のたびに保険料が上がるのは、こうした事情によるものです。
自分の区分の調べ方
自分の住む場所がどの区分かは、見積もりを取れば分かります。
同じ区分でも保険会社によって保険料は違うので、比べる価値があります。区分が高い地域ほど、差も大きくなりやすいところです。
見直しの手順は、火災保険の見直し方|賃貸と持ち家別に保険料を下げる手順にまとめています。
水災を外してよいか

保険料が上がると、水災を外そうかと考える方が出てきます。実際、外せる商品がほとんどです。ただし外してよい人と、外すと危ない人がはっきり分かれます。判断の順番をお伝えします。
まずハザードマップを見る
判断の出発点は、自分の家が浸水する地域かどうかです。
市区町村が出しているハザードマップで、想定される浸水の深さを確かめましょう。3メートルなどと書かれていれば、2階まで水が来る可能性があります。
土砂災害の警戒区域に入っていないかも、あわせて見ておきましょう。
外してよい場合
浸水の心配が小さい住まいなら、外す選択もあります。
マンションの上層階が代表です。ハザードマップで色が付いておらず、周りに崖もない土地なら、優先度は下がります。
浮いた保険料を家財の補償に回す、というのも一つの手です。
外すと危ない場合
逆に、外してはいけない住まいもあります。
戸建ての1階に住んでいて、川や海が近いなら残しましょう。マンションでも1階や地下の駐車場は浸水します。
近年は下水があふれる内水氾濫も増えており、川から離れていても油断はできません。
浸水したときにやること

実際に浸水してしまった場合の動き方です。片付けたい気持ちになりますが、先にやるべきことがあります。順番を間違えると、受け取れるはずのお金が受け取れなくなります。3つだけ覚えておいてください。
片付ける前に写真を撮る
いちばん大事なのがこれです。
水の跡が残っているうちに、部屋ごと、壊れたものごとに撮っておきます。浸水の深さが分かる写真が、支払いの判断に直結します。
メジャーを当てて撮っておくと、なお確実です。
保険会社に連絡する
写真を撮ったら、加入している保険会社に電話します。
修理の業者を自分で決める前に、まず連絡するのが順番です。大きな災害のあとは電話が混み合うので、ウェブの受付も使ってみてください。
壊れたものを捨てる前に、確認しておくと安心です。災害のあとは保険金で無料修理という勧誘が増えるので、火災保険の申請代行は危ないもあわせてご覧ください。
罹災証明書を申請する
市区町村に申請すると、被害の程度を証明する書類が出ます。
保険の請求に必ず要るものではありませんが、公的な支援を受けるときに必要になります。申請には期限があることが多いので、早めに動きましょう。
片付けの前に撮った写真が、ここでも役に立ちます。
水災補償のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
保険を使うと保険料は上がるか
火災保険には自動車保険のような等級がありません。使ったことを理由に、次の保険料が上がることはないので、遠慮せず請求しましょう。
床下浸水でも出ることはあるか
損害が再調達価額の30パーセント以上になれば対象です。ただし床下だけでその水準に届くことは少ないので、期待しすぎないほうがよいと思います。
水漏れの補償があれば足りるか
別のものです。水漏れの補償は給排水設備の事故が対象で、外から水が入ってくる災害は水災の担当になります。
雨漏りは対象になるか
経年劣化による雨漏りは対象外です。台風で屋根が壊れて雨が入った場合は、風災として扱われることがあります。
家も車も浸水したときは
家と家財は火災保険、車は自動車保険という分担です。どちらも別々に手続きが必要なので、連絡先を2つ用意しておきましょう。
まとめ

水災は、付いているかどうかと浸水の深さで決まります。要点を振り返りましょう。
- 洪水と高潮と土砂崩れが水災の対象
- 床上浸水か地盤面45センチ超が条件
- 床下浸水では出ないことが多い
- 家電や家具は家財の契約が必要
- 2024年10月から市区町村ごとの5区分に
- 片付ける前に浸水の深さを撮っておく
まずハザードマップを見て、それから証券を開いてください。この順番だと、外すか残すかの判断がすぐつきます。

