給付金の支払可否はご契約の約款や保険会社の判断によって異なります。請求の際は必ずご加入の保険会社にご確認ください。

転んで骨折して、ボルトを入れる手術をしました。1年後にそのボルトを抜く手術で入院するんですが、これも保険で請求できますか?

入院は請求できる可能性が高いです。ただ、手術のほうは保険のタイプ次第なので、一緒に確認していきましょう。
- 骨折の手術でボルトやプレートを入れた人
- 抜釘手術の予定が決まった人
- ネットで調べて情報が食い違い混乱している人
- 請求漏れを防ぎたい人
骨折の手術でボルトやプレートを入れると、骨がくっついたあとに取り出す「抜釘(ばってい)手術」を受けることがあります。ケガの治療の続きだから請求できて当然、と思われがちな手術です。骨折そのもので何が出るかは、骨折で保険はいくら出る?出る人と出ない人の分かれ目をご覧ください。
ところが実際には、加入している保険のタイプによって、手術給付金が出るかどうかが変わります。ネットで「対象になる」「対象外」と情報が分かれているのも、これが理由です。さらに入院給付金にも、見落としやすい落とし穴があります。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っています。この記事では、実際にいただいた相談事例をもとに、抜釘手術で給付金を受け取れるかどうかの判断基準をまとめました。
- 手術給付金と入院給付金の結論
- 88種類タイプと手術料算定タイプの違い
- 1年後の入院が疾病入院になる理由
- 自分の保険で確認する方法
抜釘手術の給付金早見表

先に結論をまとめておきます。抜釘手術で請求を考えるときは、「手術給付金」と「入院給付金」を分けて考えるのがポイントです。この2つは判断の基準がまったく違うため、片方が対象外でももう片方は受け取れる、ということがよく起こります。まずは全体像を早見表で確認してから、それぞれの理由を見ていきましょう。
手術給付金の結論
手術給付金は、保険のタイプによって結論が分かれます。
| 保険のタイプ | 抜釘手術の手術給付金 |
|---|---|
| 88種類タイプ(かなり以前の保険) | × 対象外 |
| 手術料算定タイプ(免責手術に抜釘が含まれない) | ○ 対象 |
| 手術料算定タイプ(免責手術に抜釘が含まれる) | × 対象外 |
同じ抜釘手術でも、契約している保険の約款次第で扱いが正反対になるわけです。
入院給付金の結論
抜釘のための入院は、入院給付金を請求できる可能性が高いです。
手術の種類とは関係なく、治療のための入院であれば支払いの対象になるからです。手術給付金が対象外のタイプでも、入院のほうはあきらめる必要はありません。
ただし、骨折から時間が経っている場合は、ケガの入院ではなく病気の入院として請求します。ここを間違えると、請求が通らないことがあるので注意してください。
請求前に知っておきたい前提
実際に給付金が支払われるかどうかは、最終的に保険会社の判断になります。
約款の細かい条件や、診断書に書かれた手術名によって結果が変わるからです。この記事の内容は、請求するかどうかを判断するための目安として使ってください。
- 約款の支払条件
- 診断書に記載された手術名
- 骨折した日から入院までの日数
判断がつかない場合でも、請求してみる価値はあります。対象外なら保険会社から連絡があるだけで、損をすることはありません。
手術給付金の対象になる条件

ここからは、手術給付金の対象かどうかが分かれる理由を詳しく見ていきます。カギになるのは、医療保険が手術を「どう定義しているか」です。保険会社によって書き方は違いますが、大きく分けると2つのタイプしかありません。ご自身の保険がどちらにあたるかがわかれば、結論はほぼ見えてきます。
抜釘手術の正式な手術名
抜釘手術は、医療の現場では「骨内異物(挿入物を含む)除去術」という名前で扱われることが多い手術です。
「抜釘」は通称で、公的医療保険の点数表にはこの正式名称で載っているためです。保険会社が支払いを判断するときも、この正式名称をもとに確認していきます。
そして骨内異物除去術は、公的医療保険で「手術料」として算定される手術にあたります。この点が、次に説明する保険のタイプとの関係で重要になります。
88種類タイプの保険は対象外
かなり以前に加入した「88種類タイプ」の保険では、抜釘手術は手術給付金の対象外です。
このタイプは、約款に定められた88種類の手術に当てはまる場合だけ給付金を支払う仕組みになっています。抜釘手術(骨内異物除去術)は、その88種類に含まれていません。

自分の保険が88種類タイプかどうか、どうやってわかるの?
約款の手術給付金の項目に「別表に定める手術」と書かれ、手術の一覧表がついていれば88種類タイプです。確認の手順は、このあとの「自分の保険で対象か確認する方法」で詳しく説明します。
手術料算定タイプは免責手術を確認
比較的新しい「手術料算定タイプ」の保険では、免責手術に抜釘が含まれていなければ対象になります。
このタイプは「公的医療保険で手術料が算定される手術」を原則すべて対象にしています。そのうえで、約款で一部の手術だけを対象外として除いているからです。この除かれた手術を「免責手術」と呼びます。免責手術の代表例はけがを縫う手術は給付金が出ない?で解説しています。
- 抜釘手術は手術料が算定される手術
- 約款の免責手術の一覧を確認
- 一覧に抜釘がなければ対象
ネットで「手術料算定タイプでも抜釘は対象外」という情報を見かけるのは、免責手術に抜釘を入れている商品があるためです。同じタイプでも商品ごとに違うので、ご自身の約款で確かめることが欠かせません。
抜釘の入院は疾病入院として請求

手術給付金が対象外だったとしても、入院給付金は受け取れる可能性があります。ただし、ここにも注意したい点があります。転倒によるケガの治療なのに、請求の区分は「病気の入院」になるのです。直感とは逆の扱いなので、多くの方が戸惑う部分でもあります。その理由を順番に説明していきます。
災害入院の180日ルール
ケガの入院として請求できるのは、事故の日から180日以内に始まった入院だけです。
多くの医療保険では、災害入院給付金の支払条件として次のような決まりが設けられているからです。
不慮の事故の日からその日を含めて180日以内に開始した入院であること
今回の相談事例では、抜釘のための入院は骨折から1年後です。事故の日から180日を超えているため、災害入院給付金の条件には当てはまりません。
180日を過ぎた入院の扱い
180日を過ぎてから始まった入院は、疾病入院給付金として請求できる可能性が高いです。
災害入院の条件から外れた入院は、疾病入院の区分で扱われるためです。
| 事故の日から入院開始まで | 請求する区分 |
|---|---|
| 180日以内 | 災害入院給付金 |
| 180日を超える | 疾病入院給付金 |
災害入院で支払限度日数まで受け取ったあとでも、疾病入院として請求できる場合があります。1回目の入院で上限に達した方も、あきらめずに確認してみてください。
病気とケガを区別しない保険の場合
最近の医療保険であれば、区分を気にせず請求できることが多いです。
比較的新しい商品の多くは、入院給付金を病気とケガで分けずに1つにまとめているからです。この場合は180日ルールそのものがなく、抜釘の入院もそのまま入院給付金の対象になります。

保険証券に「災害入院」と「疾病入院」が別々に書いてあるかを見ればいいんですね
そのとおりです。証券で2つに分かれていれば180日ルールがあるタイプ、「入院給付金」とだけ書かれていれば区別のないタイプだと判断できます。
自分の保険で対象か確認する方法

ここまでの内容を、ご自身の保険に当てはめて確認してみましょう。必要なのは、保険証券・約款・病院の診断書の3つです。すべてが手元になくても、保険会社に問い合わせれば確認できます。コールセンターで実際にあった問い合わせをもとに、スムーズに確認するためのコツもあわせてお伝えします。
約款で免責手術の一覧を見る
手術給付金の対象かどうかは、約款の手術給付金の項目で判断できます。
保険のタイプも免責手術も、すべて約款の中に書かれているからです。見るべき場所は、次の表のとおりです。
| 約款の書き方 | 保険のタイプ | 確認すること |
|---|---|---|
| 別表に定める手術 | 88種類タイプ | 抜釘は対象外 |
| 公的医療保険制度で手術料の算定対象として列挙されている手術 | 手術料算定タイプ | 対象外の手術の一覧に抜釘があるか |
免責手術の一覧は「給付の対象とならない手術」「支払対象外の手術」などの見出しで載っていることが多いです。約款が手元になくても、多くの保険会社は契約者向けのホームページで公開しています。
診断書で手術名を確認
請求の前に、診断書に書かれた手術名を確認しておくと安心です。
保険会社は「抜釘」という通称ではなく、診断書に記載された正式な手術名で支払いを判断するためです。「骨内異物(挿入物を含む)除去術」と書かれているかを見てください。
- 手術名の正式な記載
- 手術を受けた日付
- 入院の開始日と退院日
- もとの骨折の発生日
もとの骨折の日付は、180日ルールの判定に使われます。1回目の手術のときの書類も一緒に保管しておくと、手続きがスムーズです。必要書類の全体像は保険金・給付金の請求に必要な書類とは?でまとめています。
保険会社に問い合わせるときのコツ
自分で判断がつかないときは、保険会社に直接聞くのが一番確実です。
ただ、聞き方によっては答えが曖昧になってしまいます。「抜釘」ではなく正式な手術名で伝えると、その場で回答をもらいやすくなります。
- 証券番号
- 手術の正式名称
- 骨折した日と入院の開始日
この3つがそろっていれば、担当者も約款と照らし合わせてすぐに確認できます。手術名がわからないまま問い合わせると「診断書を見ないと判断できません」という回答になりがちです。先に病院で確認しておくのがおすすめです。
抜釘手術の給付金のよくある質問

最後に、抜釘手術の請求で実際によくいただく質問をまとめました。骨折の治療は期間が長くなりやすく、1回目の手術と抜釘手術の間にさまざまな疑問が出てきます。気になる項目だけ読んでいただいても大丈夫です。関連する記事へのリンクもあわせて載せています。
骨折の手術で給付済みの場合の請求
骨折の手術で手術給付金を受け取っていても、抜釘手術は別に請求できます。
ボルトを入れる手術と抜く手術は、それぞれ別の手術として扱われるからです。免責手術に該当しなければ、抜釘手術の分もあらためて手術給付金の対象になります。
日帰りの抜釘手術の扱い
入院せずに日帰りで抜釘手術を受けた場合でも、手術給付金を請求できることがあります。
外来で受けた手術も対象にしている医療保険が増えているためです。ただし、入院中の手術より外来の手術のほうが給付金の倍率を低く設定している商品もあります。入院給付金は、当然ながら日帰りの場合は対象になりません。
抜釘手術の請求期限
給付金を請求できる期限は、約款では原則3年です。
保険法で、給付金を請求する権利は3年で時効になると定められているからです。ただし実際には、必要な書類がそろえば3年を過ぎても請求できることがあります。骨折から抜釘まで1年以上空くことも多いので、1回目の手術の請求を忘れていないかもあわせて確認してください。詳しくは保険金・給付金の請求ガイド|必要書類と診断書代で損しない方法で解説しています。
診断書代の負担
診断書の発行にかかる費用は、基本的に請求する方の自己負担です。
給付金の見込み額より診断書代のほうが高くなると、かえって損をしてしまいます。保険会社によっては、一定額以下の請求なら診断書のかわりに領収書などで受け付けてもらえる場合もあります。詳しくは保険金・給付金の請求ガイド|必要書類と診断書代で損しない方法をご覧ください。
リハビリ入院との違い
骨折後のリハビリのための入院は、抜釘の入院とは別の注意点があります。
入院先の施設の種類によっては、入院給付金の対象外になることがあるためです。骨折の治療が長引いている方は、入院給付金の対象になる入院とならない入院もあわせて確認しておくと安心です。
まとめ

抜釘手術の給付金は、手術給付金と入院給付金を分けて考えるのがポイントです。手術のほうは保険のタイプ次第ですが、入院のほうは請求できる可能性が高くなっています。
- 抜釘手術の正式名は骨内異物除去術
- 88種類タイプの旧保険は対象外
- 手術料算定タイプは免責手術になければ対象
- 骨折から180日超の入院は疾病入院で請求
- 請求期限は原則3年
「対象外だろう」と思い込んで請求しないのが、一番もったいないパターンです。まずは保険証券を手元に出して、確認するところから始めてみてください。

入院のほうだけでも請求してみます!
ぜひそうしてください。今の保険が古いタイプだとわかった方は、これを機に保障内容を見直してみるのもひとつの方法です。手術の保障範囲は、ここ十数年で大きく広がっています。

