この記事は厚生労働省と生命保険文化センターの公表資料をもとにまとめています。限度額や上限額は改定されることがあり、市区町村によって扱いが違う場合もあります。実際の手続きはお住まいの市区町村にご確認ください。

親の介護って、いくらかかるのでしょうか。見当もつかなくて不安です。

調査では月9万円で、期間は平均4年7か月。公的な制度で抑えられます。
- 親の介護がそろそろ心配な人
- いくら用意すべきか知りたい人
- 自己負担を抑える制度を知りたい人
- 施設の費用が気になる人
介護のお金は、話題にしにくいまま先送りになりがちです。
ただ、公的な制度を知っているかどうかで負担は大きく変わります。申請しないと戻らないお金もあります。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。数字と制度を順に見ていきましょう。
介護にかかるお金の平均

まず全体像をつかみましょう。生命保険文化センターが3年ごとに行っている調査に、実際にかかった金額が出ています。過去3年間に介護を経験した人に聞いた数字です。
一時費用は平均47万円
介護が始まるときに、まとまった出費があります。
手すりを付ける住宅改造や、介護用ベッドの購入などです。こうした一時的な費用の合計は、平均47.2万円と報告されています。
想定しておかないと、最初の数か月でつまずくことになります。
月々は平均9万円
続いて、毎月の負担です。
月々の費用は平均9.0万円という結果でした。公的介護保険の自己負担分も含んだ金額です。
年間にすると、100万円を超える計算になります。
在宅と施設で2倍以上の差
どこで介護するかによって、金額は大きく変わります。
| 介護を行った場所 | 月々の費用 |
|---|---|
| 在宅 | 平均5.3万円 |
| 施設 | 平均13.8万円 |
在宅か施設かという選択が、お金の面では一番大きな分かれ道です。
介護期間は平均4年7か月

月の金額だけでは実感が湧きません。どれくらい続くのかを知ってはじめて、備える金額が見えてきます。ここが一番見落とされているところです。
55か月という現実
同じ調査に、期間の数字も出ています。
介護を行った期間は平均55.0か月、年に直すと4年7か月でした。いま介護中の人については、始めてからの経過期間を数えた数字です。
短期間で終わるものではない、と考えておくほうが安全でしょう。
4年を超える人が約4割
平均だけを見ていると、実感を誤ります。
4年を超えて介護した人は、約4割にのぼります。10年近く続く例も珍しくありません。
長引いたときにどうするかまで、考えておきたいところです。
総額の目安は500万円超
2つの平均を組み合わせてみます。
一時費用47.2万円に、月9.0万円を55か月分足すと約542万円です。あくまで平均どうしを掛け合わせた目安ですが、規模感はつかめます。
教育費のピークと重なる世代にとって、無視できない金額です。
公的介護保険の自己負担

ここから制度の話に入ります。日本には公的な介護保険があり、サービスを使うときの負担は一部で済みます。まず入口の仕組みを押さえましょう。
かかった費用の1割から3割
負担する割合は決まっています。
介護サービスにかかった費用の1割が自己負担です。一定以上の所得がある人は2割か3割になります。
1万円分のサービスなら、1割の人は1,000円を払う形です。
保険料は40歳から払っている
気づかないうちに、もう払い始めています。
公的介護保険の保険料は、40歳になった月から納めています。給与明細の控除欄に入っているはずです。
自分のためだけでなく、親世代を支える仕組みでもあります。
要介護認定が入口になる
使うには手続きが必要です。
市区町村に申請し、調査と審査を経て要介護度が決まります。どこから手を付けてよいか分からないときの相談先が、地域包括支援センターです。
この窓口を知っているだけで、最初の一歩がぐっと軽くなります。
使える量には上限がある

1割で済むなら安心、とはいきません。安く使える量そのものに枠があるからです。ここを知らないと、思わぬ出費に驚くことになります。
要介護度ごとの限度額
在宅でサービスを使う場合、月に使える金額の枠が決まっています。
| 要介護度 | 1か月の限度額 |
|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
この金額はサービスの値段であって、自己負担額ではありません。
超えた分は全額自己負担
枠を超えて使った場合の扱いが厳しくなっています。
限度額を超えた分は、1割ではなく全額の自己負担になります。急に負担が重くなる仕組みです。
月々の費用が膨らむのは、だいたいこのパターンです。
ケアマネジャーに相談する
枠の中でどう組むかを一緒に考えてくれる人がいます。
ケアプランを作るケアマネジャーに、予算も含めて相談しましょう。優先順位をつけて組み直すと、同じ枠でも使い勝手が変わります。
遠慮せずに、お金の事情も伝えたほうが良い提案をもらえるでしょう。
高額介護サービス費で戻る

負担が重くなりすぎないよう、月ごとの上限が設けられています。医療の高額療養費と似た仕組みです。知らずに使っていない人が多い制度でもあります。
所得に応じた月の上限
上限を超えた分は、あとから戻ってきます。
| 区分 | 負担の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 課税所得380万円未満の課税世帯 | 44,400円 |
| 住民税世帯非課税 | 24,600円 |
多くの家庭が当てはまるのは、月44,400円の区分です。
申請しないと戻らない
ここが一番のつまずきどころです。
支給を受けるには、市区町村への申請が必要です。黙っていても自動で振り込まれるわけではありません。
一度申請すれば、その後は自動で支給される自治体もあるようです。
医療と合算できる制度も
医療費もかさんでいる場合は、もうひとつ使える制度があります。
高額医療高額介護合算制度といい、同じ世帯の1年分を合算して上限を超えた分が戻ります。年収約370万円から770万円の世帯なら、年67万円が目安です。
医療側の仕組みは高額療養費制度とはで解説しています。
施設に入るといくらかかるか

在宅が難しくなったときの話です。施設の費用は、介護保険の自己負担だけでは済みません。何が上乗せされるのかを知っておきましょう。
特別養護老人ホームの目安
厚生労働省が、要介護5の人の例を示しています。
| 部屋のタイプ | 1か月の自己負担の目安 |
|---|---|
| 多床室 | 約109,930円 |
| ユニット型個室 | 約146,980円 |
部屋のタイプが違うだけで、月に3万円以上の差がつきます。
居住費と食費は別にかかる
内訳を見ると、介護保険の部分は一部にすぎません。
居住費と食費と日常生活費は、介護保険とは別に払います。この3つで月8万円を超えることもあります。
施設の見学では、総額がいくらになるかを必ず聞いてください。
補足給付で下がることもある
所得や資産が一定以下なら、軽くなる仕組みがあります。
特定入所者介護サービス費といい、居住費と食費に負担の限度額が設けられる仕組みです。利用するには、市区町村で負担限度額認定を受ける必要があります。
これも申請しないと使えないので、入所の前に窓口で聞きましょう。
親の介護のお金のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
介護費用は誰が払うのか
親本人の年金や預貯金でまかなうのが基本です。子が肩代わりしすぎると、自分の老後と教育費が崩れます。
民間の介護保険は必要か
公的制度で上限がかかるので、まずそこを把握してから考える順番です。親の預貯金で足りない部分がはっきりしてから検討しましょう。
40歳でも介護保険は使えるか
65歳以上は原因を問わず使えますが、40歳から64歳は決められた病気が原因の場合に限られます。詳しい条件は市区町村で確認してください。
介護で仕事を休めるか
介護休業の制度があり、雇用保険から給付を受けられる場合があります。勤め先の担当窓口に早めに相談しておきましょう。
親の保険の内容がわからない
元気なうちに確かめておくのが一番です。調べ方と手続きは親が認知症になる前にやる保険の手続き3つにまとめました。
まとめ

数字と制度を整理しておきましょう。
- 一時費用47.2万円 月9.0万円 期間4年7か月
- 在宅5.3万円に対し施設は13.8万円
- 自己負担は1割から3割
- 限度額を超えた分は全額自己負担
- 高額介護サービス費は申請しないと戻らない
- 施設は居住費と食費が別にかかる
介護が始まってから調べ始めると、申請が後手に回ります。親の年金額と預貯金、そして地域包括支援センターの場所だけは先に知っておきましょう。
親の公的な保障が気になる方は、遺族年金はいくらもらえるもあわせてどうぞ。

