給付金の取り扱いは、加入している保険の約款によって異なります。この記事は一般的な例をまとめたものです。実際の可否は、ご加入の保険会社にご確認ください。

手術を受けたのに、給付金は出ませんと言われました。手術なのになぜでしょうか。

医療保険の手術給付金には、対象にならない手術があるんです。3つの条件で決まりますよ。
- 抜歯やインプラント
- 大腸ポリープの切除
- ICLやレーシックなどの視力矯正
- 美容外科で受けた眼瞼下垂症手術
- ほくろ除去
医療保険に入っていれば、どんな手術でも給付金が出ると思っていませんか。
実際には、手術という名前がついていても、給付金の対象にならない手術があります。請求してから断られると、気持ちの負担も大きいものです。
私は保険会社に約7年勤め、コールセンターでこうしたご相談を数多く受けてきました。AFP(ファイナンシャルプランナー)として、判断の分かれ目をまとめます。読み終えるころには、ご自身の手術が対象になりそうかの見当がつくはずです。
手術給付金が出るかを決める3つの条件

まず押さえたいのが、給付金の可否を決めている土台です。保険会社がその場の判断で決めているわけではなく、約款に書かれた基準に当てはめています。その基準は大きく3つあり、ひとつでも外れると対象になりません。ここを知っておくと、あとに出てくる個別のケースが理解しやすいはずです。
保険のタイプで基準が変わる
医療保険の手術給付金は、大きく2つのタイプに分かれます。
| タイプ | 判断の基準 | 多い契約時期 |
|---|---|---|
| 手術料算定タイプ | 公的医療保険の医科診療報酬点数表で手術料が算定される手術 | 比較的新しい保険 |
| 88種・99種タイプ | 約款に載っている88種類や99種類の手術一覧に当てはまるか | 10年以上前の保険 |
同じ手術でも、タイプが違えば結論が逆になることがあります。この違いがはっきり出るのが不妊治療で医療保険は請求できる?のケースです。切らない治療を選べる子宮筋腫の手術も同じ理屈です。
治療目的かどうか
2つ目の条件は、その手術が病気やケガの治療のためかどうかです。
見た目を整えるための手術は、どのタイプの保険でも対象外になります。同じ部位の手術でも、目的が治療か美容かで扱いが分かれます。
この判断は、診断書に書かれた病名や術式をもとに保険会社が行います。
約款の免責手術に入っていないか
3つ目が、約款で最初から除外されている手術かどうかです。
日常的によく行われる処置は、免責として給付の対象から外されていることがあります。点数表に載っていても、約款で除外されていれば支払われません。
この記事で扱うケースを、先に一覧にしておきます。
| 手術の例 | 手術料算定タイプ | 88種・99種タイプ |
|---|---|---|
| 抜歯 | 対象外 | 対象外が一般的 |
| インプラント | 対象外 | 対象外 |
| 大腸ポリープ切除 | 手術として算定されれば対象 | 対象になることが多い |
| ICL | 対象外 | 対象になる可能性あり |
| 眼瞼下垂症手術(美容外科) | 対象外 | 対象になる可能性あり |
| ほくろ除去 | 手術名と目的による | 手術名と目的による |
そもそも対象外になる免責手術

最初に見ていくのが、約款で除外されている手術です。国のルールの上では手術として扱われていても、医療保険では支払わないと決められています。どれも通院や日帰りで済むことが多く、入院を伴うような大きな手術とは性質が違うためです。代表的なものを知っておくと、無駄な請求の手間を減らせます。
抜歯は約款で免責
虫歯や親知らずの抜歯は、ほとんどの医療保険で対象外です。
抜歯そのものは医科診療報酬点数表にも項目があります。それでも多くの約款には、抜歯は免責とすると書かれているためです。
手術という言葉が使われていても、支払いの対象にはならないと考えておきましょう。
創傷処理や皮膚切開術も対象外
抜歯のほかにも、免責とされている処置があります。
- 創傷処理(切り傷の縫合など)
- 皮膚切開術(おできの切開など)
- デブリードマン(壊死した組織を取り除く処置)
- 骨または関節の非観血的整復術や固定術
- 外耳道異物除去術や鼻内異物摘出術
免責の範囲は保険会社によって少しずつ違います。気になる処置を受けたときは、約款の免責事項を確認してみてください。けがを縫った場合の例外はけがを縫う手術は給付金が出ない?で解説しています。骨折で何が出るかは骨折で保険はいくら出る?をご覧ください。
インプラントが出ない理由
インプラントも、医療保険の手術給付金の対象にはなりません。
理由は単純で、健康保険がきかない自由診療だからです。医科診療報酬点数表に手術料の設定がないため、算定の対象そのものになりません。
ただし、支払った費用は医療費控除の対象になります。領収書は捨てずに保管しておきましょう。
自由診療の手術は原則対象外

次に多いのが、自由診療で受けた手術のご相談です。全額自己負担で高額になるぶん、保険で取り戻したいと考えるのは自然なことだと思います。ただ、新しい医療保険ほど公的医療保険のしくみに連動しているため、結論は厳しくなりがちです。代表的な3つのケースで見ていきます。
ICLは視力矯正で対象外
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、手術料算定タイプの保険では対象外です。
近視や乱視の矯正は病気の治療ではないとされ、国の点数がついていないためです。両目で50万円ほどかかっても、給付金は出ません。
同じ目の手術でも、白内障は保険診療なので扱いが変わります。くわしくは白内障手術と保険請求|給付金が1回分になるケースをご覧ください。
美容外科での眼瞼下垂症手術
眼瞼下垂症は、まぶたが下がって視界が狭くなる病気です。
治療のための手術なので、保険診療で受ければ対象になり得ます。ところが仕上がりを重視して美容外科で受けると、自由診療となり手術料が算定されません。
同じ病気の同じ手術でも、受ける場所で結論が変わります。
88種タイプなら例外もある
ここまでは新しい保険の話です。古い88種・99種タイプなら結論が変わることがあります。どちらを残すべきかは古い保険は解約していい?で整理しました。
- 病気の治療が目的であること
- 医療法に定める病院や診療所で受けたこと
- 約款の手術一覧に当てはまること
古い保険を解約せずに持っていたおかげで給付金が出た、という例もあります。心当たりのある方は証券を確認してみてください。心臓のカテーテル治療の扱いは狭心症でステントを入れたら保険は出る?で解説しています。
手術名しだいで変わるケース

もっとも判断が分かれるのが、この章のケースです。同じ治療を受けたつもりでも、医療機関がどの名称で算定したかによって結論が変わります。しかもその名称は、会計のときにもらう書類に書かれています。自分で確かめられる部分なので、請求の前にぜひ見ておきましょう。
大腸ポリープは手術か検査か
内視鏡でポリープを切除した場合、多くは給付金の対象になります。検査との分かれ目は大腸ポリープを切除したら保険金はおりる?にまとめました。
| 算定のされ方 | 明細書の記載例 | 給付金 |
|---|---|---|
| 手術扱い | 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 | 対象になることがほとんど |
| 検査扱い | 生検など組織を採っただけの処置 | 対象外が一般的 |
診療明細書の手術の欄に記載があるかを、まず確かめましょう。
ほくろ除去は摘出術か切開術か
ほくろ除去の可否を分けるのも、明細書に書かれた手術名です。
皮膚・皮下腫瘍摘出術なら対象になることがあり、皮膚切開術は対象外になりやすいという違いがあります。
大きくなってきた、出血しやすいといった理由で医師にすすめられた切除なら、治療目的と認められやすくなります。
病理検査の結果で給付が変わる
切除した組織は、そのあと病理検査に回されるのが一般的です。
ここで悪性や上皮内新生物と診断されると、がん保険の診断給付金などの対象になることがあります。良性なら診断書が不要で、明細書だけで請求できる保険会社も増えています。
結果が出る前に請求すると二度手間になりがちです。1週間から2週間ほど待ってから連絡するとスムーズに進みます。
同じ手術を何回も受けたとき

対象になる手術でも、受けた回数どおりに給付金が出るとは限りません。3回受けたのに1回分しか出なかった、というご相談は毎年いただきます。これは保険会社の誤りではなく、約款で決められた取り扱いです。納得して請求できるよう、しくみを整理しておきましょう。
一連の治療で1回だけ算定される手術
手術のなかには、何回行っても手術料が1回しか算定されないものがあります。
- 体外衝撃波による腎や尿管の結石破砕術
- 体外衝撃波による胆石や膵石の破砕術
- 皮膚腫瘍の冷凍凝固摘出術
- 下肢静脈瘤の血管内塞栓術
多くの医療保険が、点数表の算定ルールに連動しているためです。そのため保険のうえでも、一連の治療は1回の手術として扱われます。
60日に1回が限度になる約款
多くの約款では、こうした手術に期間の区切りを設けています。
1回目の実施日から60日間は、給付金は1回分だけという取り扱いです。同じ月に3回受けても、支払いは1回分だけです。
60日を過ぎてから改めて手術を受けた場合は、また対象になることもあります。左右の人工関節を別々に手術したときの扱いは、人工関節を入れたら保険料は免除される?で触れています。
1日につき算定される手術
似たルールに、手術料が1日につき算定される手術もあります。
大動脈バルーンパンピング法などが当てはまり、治療が数日続いても初日の分だけが給付の対象です。どちらも受けた回数どおりには出ない、という点が共通点です。
同じ日に別の手術を2つ受けた場合の扱いは、同じ日に2回手術したら手術給付金は?1回分になる理由と例外で解説しています。手術は対象でも入院給付金で注意がいる例は、抜釘手術は医療保険で請求できる?入院給付金の落とし穴をご覧ください。
請求前に確認する3つのこと

ここまでのポイントを、実際の手順に落とし込んでみましょう。手元の書類を見れば、対象になりそうかどうかはかなりの精度で見当がつきます。そのうえで保険会社に聞けば、やり取りも一度で済むことが多いです。診断書を取るかどうかの判断も早くなります。
診療明細書の手術区分
会計のときにもらう診療明細書を、まず開いてみてください。
手術という区分の欄に記載があれば、公的医療保険で手術として算定されています。記載がなければ、検査や処置として扱われた可能性が高いです。
ここに書かれた正式な手術名が、そのあとの確認でそのまま使えます。
保険証券と約款のタイプ
次に、ご自身の保険がどちらのタイプかを確かめます。
約款に医科診療報酬点数表という言葉があれば手術料算定タイプです。88種類や99種類といった一覧が載っていれば、もう一方のタイプになります。
古い保険のほうが対象が広いこともあるので、見直す前に必ず確認しましょう。
保険会社への聞き方
最後にコールセンターへ電話します。聞き方にはコツがあります。
証券番号を伝えたうえで、明細書に書かれた手術名をそのまま読み上げてください。手術の名前で照会できるため、回答がその場で得られることも多いです。
書類の集め方は、保険金・給付金の請求ガイド|必要書類と診断書代で損しない方法にまとめています。
手術給付金のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
日帰り手術でも対象になるか
入院しなくても、約款の対象手術であれば請求できます。給付倍率が入院中より低く設定されていることが多いので、金額は証券で確認しましょう。
レーシックは対象になるか
ICLと同じく視力矯正なので、手術料算定タイプでは対象外です。医療費控除は使えますので、領収書を残しておいてください。
対象外と言われたら諦めるしかないか
ほかに契約している保険があれば、そちらで対象になることもあります。特約の付いた学資保険や共済も、あわせて確認してみてください。判断に納得できないときは給付金が支払われないときにできることもご覧ください。
請求には期限があるか
約款では手術を受けた日から3年と決められています。ただし必要な書類がそろえば、3年を過ぎていても請求できることがあります。過去の手術でも諦めずに確認してみてください。
診断書代は自己負担になるか
原則として自己負担です。給付金より診断書代のほうが高くつくこともあるため、請求前に金額の見当をつけておくと安心できます。
まとめ

手術給付金は、手術という名前だけでは決まりません。要点を振り返ります。
- 保険のタイプで判断の基準が変わる
- 抜歯や皮膚切開術は約款で免責
- 自由診療の手術は原則対象外
- 大腸ポリープやほくろ除去は手術名しだい
- 一連の治療は60日に1回が限度のことがある
- 診療明細書の手術名を持って問い合わせる
対象外が続くようなら、保障の中身が今の生活に合っていないのかもしれません。加入から時間がたっている方は、一度プロに見てもらうと安心です。

