この記事は日本損害保険協会の公表資料をもとにまとめています。補償の範囲や支払いの条件は、商品や契約した時期で違います。ご自身の契約については証券と約款、または保険会社にご確認ください。

雪で車庫の屋根がへこみました。火事ではないので対象外ですよね。

それが出るのです。火災保険には雪災という補償が入っていることが多いのですよ。
- 雪で屋根や雨どいが傷んだ人
- カーポートや物置が壊れた人
- 雪の多い地域に住んでいる人
- 冬の備えを見直したい人
火災保険は火事のための保険だと思われがちです。
実際には、雪や雹による損害も補償の対象になっています。使えることを知らずに自腹で直す方が多いところです。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。出る場合と出ない場合を分けてお伝えします。
雪や雹の損害は火災保険の対象

まず、どこまでが補償の範囲なのかを押さえましょう。日本損害保険協会も、大雪による損害を補償の対象としている商品があると説明しています。思っているより守備範囲は広いです。
雪災という名前で入っている
証券を見ると、風災と雹災と雪災が3つ並んでいるはずです。
この3つはひとまとめで扱われることが多く、別々に外せない商品もあります。台風の備えとして入っていれば、雪の損害もカバーされているわけです。
自分で付けた覚えがなくても、入っていることが珍しくありません。
雪の重みもなだれも対象
雪災として扱われるのは、次のような被害です。
- 雪の重みで屋根やカーポートがへこんだ
- 屋根から落ちた雪で雨どいが壊れた
- なだれで建物が壊れた
- 雹でガラスや外壁に穴があいた
雪が解けて起きた洪水は、雪災ではなく水災の扱いになります。
門や塀や物置も対象になる
建物の本体だけが対象だと思っていませんか。
門や塀、物置、車庫も建物に含められることがあります。協会の資料にも付属建物として挙げられています。
契約によって扱いが違うので、証券の対象欄を見てください。
20万円の壁がある契約

ここがこの記事でいちばん知ってほしいところです。雪災が付いていても、小さな損害では1円も出ない契約があります。知らずに請求して断られる方が多い部分です。
一定額以上という条件
協会の説明に、はっきり書かれています。
風災や雪災による損害は、一定額以上に達するものであれば補償の対象とされています。つまり、金額が小さいと支払いの対象から外れるのです。
火災とは違う扱いになっていると考えてください。
古い契約は20万円から
その一定額として長く使われてきたのが20万円です。
損害額が20万円に届かないと、1円も出ない契約があります。19万円なら全額自己負担という仕組みです。
何年も見直していない契約は、この方式の可能性があります。
今は免責金額の方式が多い
新しい商品では、考え方が変わりました。
| 方式 | 損害額19万円のとき | 損害額30万円のとき |
|---|---|---|
| 20万円に達しないと出ない型 | 0円 | 30万円 |
| 免責金額5万円の型 | 14万円 | 25万円 |
| 全額を補償する型 | 19万円 | 30万円 |
同じ被害でも、契約の型しだいで受け取れる額がまったく変わります。
雪でも出ないケース

金額の条件を満たしていても、支払いの対象にならない場合があります。断られる理由はだいたい3つに分かれるので、順に見ていきましょう。
経年劣化やさびは対象外
いちばん多いのがこれです。
協会の資料では、自然の消耗や劣化、さび、腐敗、ひび割れによる損害は支払われないと明記されています。もともと傷んでいたものが雪で表に出た場合は、判断が難しくなります。
雪が原因だと分かる写真を残しておくことが大切です。
自動車は火災保険の対象外
カーポートが潰れて車がへこんだ場合はどうなるでしょうか。
カーポートは火災保険、車は自動車保険の車両保険という分かれ方です。協会も自動車は対象にならないと示しています。
同じ事故でも、2つの保険に別々に請求する形です。
地震が原因なら地震保険
原因をたどると担当が変わることがあります。
地震で起きたなだれや建物の倒壊は、火災保険では補償されません。地震や噴火、津波が原因の損害は地震保険の担当になります。
仕組みは地震保険は必要?火災保険では出ない損害にまとめました。
水道管が凍って破裂したら

冬にもうひとつ多いのが、凍結による水まわりの事故です。雪災とは別の扱いになるので、分けて覚えておきましょう。ここも契約によって差が出ます。
漏れた水による損害
破裂して水が漏れ、床や家財が濡れた場合です。
協会の資料では、給排水設備に生じた事故による漏水での水濡れが、補償される損害として挙げられています。濡れて使えなくなった家財も、家財の契約があれば対象になりえます。
濡れた範囲が分かるよう、乾く前に撮っておきましょう。
水道管そのものの修理
壊れた管を直す費用は、別の扱いになります。
管の修理費は特約でカバーする商品が多く、本体の補償とは別枠です。付いているかどうかで結果が分かれます。
濡れた損害は出たのに修理代は出ない、ということが起こります。
証券で特約を確かめる
冬が来る前にやっておきたい確認です。
証券の特約欄に、水道管の凍結に関する記載があるか見てください。見当たらなければ、保険会社に電話して聞くのが確実です。
寒波の予報が出てからでは、手続きが間に合いません。
雪のあとにやること

実際に被害が出たときの動き方です。順番を間違えると、受け取れるはずのお金が受け取れなくなります。4つの手順を覚えておいてください。
片付ける前に写真を撮る
最初にやるのは撮影です。
雪が残っている状態の写真が、原因を示す一番の証拠になります。全体と壊れた箇所の両方を撮りましょう。
屋根に登るのは危ないので、下から撮れる範囲で十分です。
保険会社に連絡する
撮ったら、修理を頼む前に連絡を入れます。
証券に書かれた番号に電話し、大雪で屋根が壊れたと伝えてください。必要な書類や進め方は担当者が案内してくれます。
先に工事を終えてしまうと、確認ができず話がややこしくなります。
応急処置の費用も残す
そのままにしておけない被害もあるでしょう。
雨漏りを止めるシートなど、被害を広げないための費用は損害防止費用として扱われることがあります。領収書を取っておきましょう。
請求の流れは家が浸水したら火災保険は出る?水災補償の落とし穴と同じです。
雪のあとに来る業者に注意

災害のあとには、必ずと言っていいほど訪問や電話が来ます。国民生活センターにも相談が集まっている分野です。ここだけは慎重に進めてください。
保険金で無料修理という誘い
公表されている相談事例に、こんな手口があります。
大雪の影響で屋根の樋がずれている、費用は保険会社から出るので負担はない、と言われて契約したというものです。あとから高額な手数料や違約金を求められています。
雪のあとは、こういう勧誘が増えると考えておきましょう。
契約する前に保険会社へ
順番を守るだけで、ほとんどのトラブルは防げます。
業者と契約する前に、まず保険会社か代理店に相談してください。損保協会もそう呼びかけています。
手口のくわしい話は火災保険の申請代行は危ないにまとめました。
困ったときの相談先
署名してしまった場合の窓口もあります。
保険金に関する災害便乗商法の相談ダイヤルは0120-309-444、消費者ホットラインは188です。どちらも無料で相談できます。
訪問で契約した場合は、クーリング・オフができることもあります。
雪災補償のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
雪下ろし中にけがをしたら出るか
火災保険は建物と家財の損害を補償するものなので、人のけがは対象外です。けがに備えるなら傷害保険の出番になります。
落ちた雪で隣の家を壊したら
自然に落ちた雪であれば、賠償の責任を問われないのが原則です。ただし雪下ろしの作業中に落として壊した場合は、個人賠償責任の出番です。
去年の雪の分も請求できるか
保険金を請求できるのは原則3年です。去年の損害でも間に合う可能性があるので、まず保険会社に聞いてみてください。
雪災だけ外して安くできるか
風災と雹災と雪災はひとまとめの商品が多く、雪災だけ外せないことがあります。雪の少ない地域でも、台風の備えとして残す意味があるのです。
断られたら諦めるしかないか
納得できなければ、中立で無料の相談窓口に持ち込めます。進め方は給付金が支払われないときにできることで解説しています。
まとめ

冬が来る前に、押さえておきたい点を振り返りましょう。
- 雪や雹の損害は火災保険の対象
- 門や塀や物置も含められることがある
- 20万円に届かないと出ない契約がある
- 経年劣化と自動車は対象外
- 片付ける前に雪の残った写真を撮る
- 業者と契約する前に保険会社へ
雪が降ってからでは、契約の型は変えられません。寒くなる前に証券を開いて、雪災の欄と支払い方を確かめておきましょう。

