保険金の支払い条件は、ご契約の約款や保険会社の判断によって異なります。実際の手続きは、必ずご加入の保険会社にご確認ください。
大切なご家族を亡くされ、深い悲しみの中で手続きのことまで考えなければならない方もいらっしゃると思います。この記事が、少しでも負担を軽くするお手伝いになればと願っています。
- ご家族を自殺で亡くされた方
- 保険金を請求できるかわからず困っている方
- 保険会社から支払いの説明を受けた方
- 契約内容の決まりを知っておきたい方
ご家族が自殺で亡くなった場合、「保険金は受け取れない」と思い込み、請求をあきらめてしまう方は少なくありません。実際には、契約の内容や加入してからの期間によって扱いが決まります。
その判断のもとになるのが「免責期間」というルールです。私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っています。この記事では、ご家族が請求を考えるときに知っておきたい制度の仕組みと、手続きの流れを順番にまとめました。
- 免責期間の仕組み
- 期間内でも支払われる場合
- ご家族が請求するときの流れ
- 支払いを断られたときの相談先
もし今、あなた自身が死にたいほどつらい気持ちを抱えているなら、保険のことよりも先に、誰かに話を聞いてもらってください。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- いのちの電話:0120-783-556(毎日16時〜21時)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
SNSでの相談窓口は厚生労働省「まもろうよ こころ」にまとめられています。
自殺の場合の死亡保険金の基本

まずは、自殺で亡くなった場合に死亡保険金がどう扱われるのか、基本の考え方から確認します。法律と保険の約款の両方に、そのための決まりがあるのです。ご家族が請求できるかどうかは、主に「加入してからどれくらいの期間が経っていたか」によって決まります。その区切りとなる免責期間について、仕組みと理由を順番に見ていきましょう。
免責期間を過ぎていれば支払いの対象
免責期間を過ぎてから亡くなった場合、死亡保険金は支払いの対象になります。
保険法では、被保険者が自殺した場合は保険会社が保険金を支払わなくてよいと定めています。ただし多くの生命保険は、約款でこの扱いを「保障が始まってから一定の期間内」に限っているためです。
| 亡くなった時期 | 死亡保険金の扱い |
|---|---|
| 免責期間内 | 原則として支払われない |
| 免責期間を過ぎた後 | 支払いの対象になる |
「自殺だから一切出ない」というわけではない、という点をまず知っておいてください。
免責期間がある理由
免責期間は、加入している人どうしの公平さを保つために設けられています。
生命保険は、多くの加入者が出し合った保険料で成り立つ助け合いの仕組みです。加入してすぐの時期に支払いが集中すると、この仕組みそのものが保てなくなってしまいます。
一方で、一定の期間が過ぎた後まで支払わないとすると、残されたご家族の生活を守るという保険本来の役割が果たせません。免責期間は、この2つのバランスをとるための決まりだといえます。
期間は多くの会社で3年
免責期間は、保障が始まった日から3年としている保険会社が多くなっています。
ただし、以前に販売された保険では1年や2年の契約もあり、会社や商品によってさまざまです。正確な期間は、保険証券や約款の「保険金を支払わない場合」の項目で確認できます。
- 数え始めは保障が始まった日
- 期間の長さは約款の記載で確認
- わからなければ保険会社に照会
免責期間内でも支払われる場合

免責期間内に亡くなった場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。亡くなったときの状態によっては、支払いの対象として扱われることがあります。また、死亡保険金が支払われない場合でも、ご家族に戻ってくるお金がある契約もあります。請求をやめてしまう前に確認していただきたい3つの点をまとめました。
精神疾患で自由な判断ができなかった場合
うつ病などの精神疾患によって自由な判断ができない状態だった場合、免責期間内でも支払われることがあります。
そのような状態での死亡は、約款で免責とされる「自殺」にはあたらないと判断した裁判例があるためです。
ただし、その状態だったことを示す役割は、請求するご家族の側にあります。通院していた医療機関の診断書や、治療の記録が大切な手がかりです。判断が難しい分野なので、請求の前に保険会社や専門家に相談することをおすすめします。
支払われなくても戻るお金
死亡保険金が支払われない場合でも、契約によってはお金が戻ってきます。
免責で保険金が支払われないとき、それまで積み立ててきたお金を契約者に払い戻すよう保険法で定められているからです。
| 保険の種類 | 戻ってくるお金の目安 |
|---|---|
| 終身保険など貯蓄性のある保険 | ある程度まとまった金額になることがある |
| 定期保険など掛け捨ての保険 | ほとんどないか少額 |
金額は契約の種類や経過した年数によって大きく変わります。受け取れるかどうかも含めて、保険会社に確認してみてください。
特約の保障の扱い
主契約とは別に、特約の保障は扱いが異なる場合があります。
災害死亡保険金や傷害特約は、不慮の事故による死亡を対象にした保障だからです。これらは期間に関係なく、自殺の場合は支払いの対象になりません。
一方、主契約の死亡保険金は、ここまで説明した免責期間の決まりに沿って判断されます。保険証券に複数の保障が載っている場合は、項目ごとに分けて確認するのがおすすめです。
免責期間後でも支払われない場合

免責期間を過ぎていれば、多くの場合は支払いの対象になります。ただし、例外として支払われないケースもあります。反対に、本来は支払われるべきなのに断られてしまうこともあるため、どこまでが例外なのかを知っておくことは大切です。ここでは、代表的な3つのケースを取り上げます。
犯罪などが関わる特別な事情がある場合
犯罪が関わっているなど特別な事情がある場合は、免責期間後でも支払われないことがあります。
最高裁判所は2004年の判決で、この点について判断を示しました。免責期間後の自殺は、特別な事情がない限り免責の対象にならないとしたのです。
そのため、期間を過ぎているのに動機を理由として支払いを断られた場合は、そのまま受け入れず相談してみる余地があります。相談先は、このあとの「よくある質問」にまとめました。
告知義務違反があった場合
加入するときの告知に事実と違う内容があった場合は、契約が解除されることがあります。
これは自殺かどうかに関係なく、健康状態などを正しく伝えずに加入した契約全般に共通する決まりです。解除されると、原則として死亡保険金は支払われません。
告知義務違反にあたるかどうかは、契約時の申告内容をもとに保険会社が判断します。心配な点があれば、請求の前に事情を伝えておくと安心です。
復活や増額で期間が再スタートする場合
契約の途中で手続きをしていると、免責期間の数え始めが変わることがあります。
一度失効した契約を復活させた場合や、保障を増やした場合は、その手続きをした日から新たに期間を数えるのが一般的だからです。
| 契約中の手続き | 免責期間の数え始め |
|---|---|
| 失効した契約の復活 | 復活した日 |
| 保障の増額 | 増額した部分は増額した日 |
| 別の保険への転換 | 転換後の保障が始まった日 |
最初の加入から長い年数が経っていても、途中の手続きによって判断が変わる場合があります。手続きの履歴は、保険会社に問い合わせればすぐに確認が可能です。
ご家族が請求するときの流れ

ここからは、実際にご家族が保険金を請求するときの流れをご説明します。つらい時期に手続きを進めるのは大きな負担ですが、すべてを一度に済ませる必要はありません。まずは保険会社に連絡するところから始めれば、必要なことは担当者が順を追って案内してくれます。期限があることだけは、早めに知っておいてください。
保険会社への連絡
最初に、保険金の受取人から保険会社へ連絡します。
電話で亡くなった方の氏名と、わかれば証券番号を伝えると、必要な書類が送られてくる流れです。どの保険会社と契約していたかわからない場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で調べることもできます。
- 亡くなった方の氏名と生年月日
- 証券番号(わかる範囲で)
- 亡くなった日
- 受取人の氏名と連絡先
必要になる主な書類
請求には、亡くなったことや受取人であることを確認する書類が必要です。
| 書類 | 主な入手先 |
|---|---|
| 保険金請求書 | 保険会社から届く |
| 死亡診断書または死体検案書 | 医療機関など |
| 亡くなった方の住民票の除票 | 市区町村の窓口 |
| 受取人の戸籍謄本と印鑑証明書 | 市区町村の窓口 |
保険会社によって求められる書類は異なります。届いた案内に沿ってそろえれば大丈夫です。わからないときは、コールセンターで1つずつ教えてもらえます。
請求期限は3年
保険金を請求できる期限は、原則として3年です。
保険法で、保険金を請求する権利は3年で時効になると定められているからです。ただし必要な書類がそろえば、3年を過ぎていても請求できることがあります。すぐに動けなくても、心配しすぎないでください。
請求の期限は、約款では原則3年です。ただし書類がそろえば過ぎていても請求できることがあるので、気になることは保険会社に確認しておきましょう。
自殺と生命保険金のよくある質問

最後に、ご家族からいただくことの多い質問をまとめました。住宅ローンや共済など、生命保険以外の契約についても触れています。支払いについて納得できない場合の相談先もご紹介しているので、必要なところだけ読んでいただいて構いません。
住宅ローンの団信の扱い
住宅ローンの団体信用生命保険(団信)にも、自殺の免責期間があります。
たとえば【フラット35】の新機構団体信用生命保険では、保障が始まった日から1年以内の自殺は対象外という決まりです。借り換えをした場合は、新しい保障が始まった日から数え直しになります。民間の住宅ローンの団信は金融機関ごとに条件が違うので、ローンを組んだ金融機関に確認してください。
共済の場合
県民共済などの共済にも、生命保険と同じような免責の決まりがあります。
ただし、期間の長さや条件は共済ごとに異なります。加入していた共済の約款やパンフレットを確認するか、共済の窓口に問い合わせてください。
保険会社の調査が入る理由
自殺による死亡の請求では、保険会社が事実関係の調査を行うことがあります。
免責期間との関係や、亡くなったときの状況を正確に確認する必要があるためです。医療機関や警察の記録を確認するため、通常より支払いまでに時間がかかる場合があります。
調査はご家族を疑うためのものではありません。見通しがわからず不安なときは、担当者にどのくらいかかりそうか遠慮なく尋ねてみてください。
支払いを断られたときの相談先
支払われない理由に納得できない場合は、ひとりで抱え込まず外部に相談できます。
- 保険会社に理由の説明を求める
- 生命保険協会の生命保険相談所に相談する
- 弁護士に相談する
生命保険相談所で解決しない場合は、中立の立場で紛争の解決を支援する「裁定審査会」という仕組みの利用も可能です。自殺に関わる保険金の問題については、自死遺族支援弁護団のような専門の相談先もあります。
受取人が手続きできないとき
受取人がショックで手続きできない状態のときは、代わりに手続きを進める方法があります。
契約によっては指定代理請求の制度が使えるほか、状況に応じて成年後見制度を利用することも一つの方法です。どの方法が使えるかは、保険会社に事情を伝えれば案内してもらえます。
まとめ

ご家族が自殺で亡くなった場合でも、死亡保険金を受け取れる可能性はあります。「自殺だから出ない」と決めつけず、まずは契約の内容を確認してみてください。
- 免責期間後なら支払いの対象
- 免責期間は多くの会社で3年
- 精神疾患の状態によっては期間内でも対象
- 復活や増額で期間が数え直しになることも
- 請求期限は原則3年
手続きは急がなくて大丈夫です。わからないことは一人で判断せず、保険会社や相談窓口を頼ってください。
ご家族を亡くされたつらさや、ご自身の気持ちも相談して大丈夫です。多くの都道府県や政令市の精神保健福祉センターでは、自死で家族を亡くされた方の相談も受け付けています。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- いのちの電話:0120-783-556(毎日16時〜21時)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
そのほかの窓口は厚生労働省「まもろうよ こころ」で確認できます。

