この記事は一般的な医療保険の考え方をもとにまとめています。保障の中身は商品によって大きく異なります。ご自身の契約については、約款と保険会社にご確認ください。

20年前の医療保険が残っています。古いので解約していいですよね。

待ってください。古いほうが手厚い部分も残っています。
- 古い保険が有利なところ
- 新しい保険が有利なところ
- 手術ごとに結論が逆になる話
- 解約するときの正しい順番
保険は新しいほうがよい、と思われがちです。
けれども手術の種類によっては、古い保険のほうが出ることがあります。解約してから気づいても戻せません。
私は保険会社に約7年勤め、AFP(ファイナンシャルプランナー)として相談を受けてきました。両方の強みを並べてお伝えします。
古い保険を解約する前に確かめること

まず全体の見取り図です。医療保険は、大きく2つのタイプに分かれます。
新しいほうが必ず良いとは限らない
保険は年々よくなっている、というのは半分だけ正しい話です。
広がった部分もあれば、狭くなった部分もあります。
見るのは保険料より保障の中身
保険料だけを比べて乗り換えると、出るはずだったものを失うことがあります。
証券を並べて、保障の中身を1行ずつ見比べてみましょう。
2つのタイプを知っておく
古いほうは、約款に並んだ88種類の手術だけを対象にするタイプです。
新しいほうは、公的医療保険で手術料が算定される手術を対象にします。この違いが、すべての結論を分けています。
タイプの見分け方は手術給付金の対象になる手術・ならない手術にまとめました。
古い保険が有利なところ

残しておいてよかった、と言われる理由は3つあります。
入院の支払限度日数が長い
1回の入院で何日まで出るかを、支払限度日数といいます。
昔の商品は120日や180日が珍しくありませんでした。いまの主流は60日です。
長く入院したときの差は、そのまま金額の差になります。
手術の倍率が高いことがある
88種類タイプは、手術の種類ごとに倍率が決まっています。
重い手術なら日額の40倍という設定もあり、20万円が支払われます。
差がはっきり出るのが、白内障のように外来で受ける手術です。
| 白内障の手術を外来で受けた場合 | 88種類タイプ | 手術料算定タイプ |
|---|---|---|
| 手術給付金の倍率 | 20倍 | 5倍 |
| 日額5,000円なら | 10万円 | 2万5,000円 |
新しいタイプは入院中なら20倍、外来なら5倍と分けている商品が多いためです。白内障の請求は白内障手術と保険請求にまとめました。
保険料が上がらない契約もある
若いときに入った終身型なら、保険料はそのままです。
いま同じ保障を買い直すと、年齢のぶんだけ高くなります。貯蓄性のある古い契約は、解約すると戻せません。
新しい保険が有利なところ

もちろん新しいほうが優れている面もあります。こちらは範囲の広さです。
対象になる手術が圧倒的に多い
88種類という数字は、いまの医療からするとかなり少ない数です。
新しいタイプなら、公的保険が使える手術はほとんど対象になります。
一覧にない手術を受けたとき、古い保険では1円も出ません。
日帰り手術や外来にも対応
昔の商品は、入院を伴う手術を前提にしていました。
いまは日帰り手術が当たり前なので、ここは新しいほうが合っています。
先進医療や一時金を付けられる
先進医療の特約は、比較的新しい商品にしか付いていません。
三大疾病の一時金やがんの通院保障も、選べるのは新しい商品です。
手術ごとに結論が逆になる

ここがこの記事で一番お伝えしたい部分です。どちらが有利かは、受けた手術で入れ替わります。
もちろん、心臓のステント治療のようにどちらでも出るものもあります。その例は狭心症でステントを入れたら保険は出る?にまとめました。
| 治療 | 88種類タイプ | 手術料算定タイプ |
|---|---|---|
| 骨折のボルトを抜く手術 | 対象外 | 免責になければ対象 |
| 心臓のステント治療 | 一覧にあれば対象 | 対象 |
| けがを縫う創傷処理 | 対象の商品がある | 免責で対象外 |
| 骨折の整復術とギプス | 対象外 | 対象外 |
抜釘は古い保険だと出ない
骨折で入れたボルトを抜く手術は、88種類の一覧に入っていません。
くわしくは骨折で保険はいくら出る?をご覧ください。
創傷処理は新しいほど厳しい
けがを縫う処置は、新しいタイプでは免責手術として外されています。
公的保険の対象でも、約款で名指しされていれば支払われません。理由はけがを縫う手術は給付金が出ない?にまとめました。
約款の別表も書き換わっている
変わっているのは手術の一覧だけではありません。
保険料免除の条件を定めた別表からも、人工関節に触れた一文が消えています。中身は人工関節を入れたら保険料は免除される?で解説しています。
解約は新しい契約が成立してから

切り替えると決めた場合も、順番を間違えないでください。
先に解約すると無保険になる
古いほうを解約してから新しいほうを申し込むと、空白の期間ができます。
その間に入院すれば、どちらからも1円も出ません。
健康状態で入れないことがある
新しい保険に申し込んでも、必ず入れるとは限りません。
健康診断の数値や通院歴で、条件が付いたり断られたりします。解約したあとでは戻れません。
正しい順番で進める
新しい契約の保障が始まったことを確かめてから、古いほうを解約します。
- 新しい保険に申し込む
- 告知と審査を通る
- 保障の開始日を確かめる
- そのあとで古い保険を解約する
残すか切り替えるかの決め方

どちらか一方を選ばなければならない、というわけでもありません。
両方持つという選び方
古い保険を残したまま、足りない部分だけ新しく足す方法もあります。
入院給付金は両方から受け取れるので、二重に払うことが無駄とは限りません。
保険料と年齢で考える
古い契約の保険料が家計を圧迫しているなら、切り替えを考える場面です。
一方で年齢が上がっているほど、入り直す保険料は高くなります。見直す時期の考え方は保険の見直しタイミングはいつ?をご覧ください。
迷ったら解約しない
解約は、いつでもできます。
けれども元に戻すことはできません。迷っている状態なら、結論を急がないほうが安全です。
古い保険のよくある質問

相談の現場でよく聞かれることをまとめました。気になる項目から読んでみてください。
何年前の保険なら古いといえるか
年数ではなく、約款の書き方で判断します。
手術の一覧表が付いていれば88種類タイプ、公的医療保険という言葉があれば新しいタイプです。
両方から受け取れるか
医療保険の給付金は、契約ごとに支払われます。
2つ持っていれば、条件を満たすかぎり両方に請求できます。
転換をすすめられたらどうするか
転換は、いまの契約を下取りに出して新しい契約に作り替える方法です。
元の契約には戻せないので、何を失うのかを必ず書面で確かめましょう。
特約だけ外すことはできるか
特約だけを解約して、保険料を下げられる商品が多くあります。
主契約を残せるなら、全部やめるより損は小さいでしょう。
解約した保険は戻せるか
解約してから一定の期間内なら、復活できる商品もあります。
ただし健康状態の告知が必要なので、必ず戻せるわけではありません。
まとめ

要点を振り返りましょう。
- 白内障の外来手術は倍率が4倍違う
- 新しいほうは対象の広さで有利
- 抜釘は古い保険だと出ない
- 創傷処理は新しい保険だと出ない
- 解約は新しい契約の成立後にする
- 両方持つという選び方もある
古い保険は、弱い保険ではありません。出る場面と出ない場面が、新しい保険と違うだけです。
解約を決める前に、証券と約款を並べて1行ずつ見比べてみてください。
