いざ調停へ。向かった先は裁判所ではなく…
「調停」と聞くと、裁判所の重々しい部屋で、夫と顔を突き合わせて話し合う……そんなドラマのような場面を想像して、前日から胃が痛くなるほど緊張していました。
しかし、私が向かったのは裁判所ではありませんでした。
指定されたのは、私が依頼した弁護士事務所の会議室だったのです。
実は、家庭裁判所まで遠方の場合、調停は(特に弁護士がついている場合)、裁判所に行かずに弁護士事務所から「電話」で参加できるシステムがあるのだそうです。
車もなく、家庭裁判所までは電車で行くにはかなり時間がかかる距離だったので、助かりました。
また、夫と絶対に合わなくて済みます。
それだけでも、少しだけホッとしました。
まさかの事態。「証拠書類が…届いていません」
調停の期日より前に、私は弁護士さんに言われた通りの書類をすべて準備し、渡してありました。
現在の貯金残高がわかる通帳のコピーや、新しく始めた仕事の給与明細など、生活状況を証明するための大切な資料です。
「これで、私がどれだけカツカツで生活しているか、調停委員の人たちにわかってもらえるはず。」
そう信じて、弁護士事務所の電話機の前で息を潜めていました。
スピーカーフォンから、家庭裁判所の調停委員さん(男女お二人)の声が聞こえてきました。
「それでは、第1回の調停を始めます。」
心臓がバクバク鳴る中、調停委員さんの自己紹介が終わり、本題に入るかと思ったその時でした。
電話の向こうから、思いもよらない言葉が聞こえてきたのです。
「あの…事前の提出書類についてですが、現在の財産状況や給与明細などが、こちらに届いていないようなのですが…。」
えっ?
私は思わず、隣に座る自分の弁護士さんの顔を見ました。
すると弁護士さんは、少し気まずそうに、でも悪びれる様子もなく言いました。
「あ、すみません。裁判所の方に送るのを忘れていました。」
……は?
忘れてた?
あんなに高い着手金(33万円)を払って、必死の思いで準備した大切な書類を、提出し忘れた!?
頭の中が真っ白になりました。
たった5分で終わった「第1回調停」
本来なら、提出した給与明細や通帳のコピーをもとに、「じゃあ婚姻費用はいくらにしましょうか。」という具体的な話し合いが進むはずでした。
しかし、判断材料となる書類がないため、話し合いのしようがありません。
結局、その日の調停で聞かれたのは、
- 「今後、離婚の方向で進めたいという意思で間違いないですか?」
- 「まずは、婚姻費用(生活費)の請求を優先して話し合うということで良いですか?」
この2点だけ。「はい、そうです」と答えると、
「わかりました。では次回までに、きちんと現在の財産状況がわかる書類を送ってくださいね。」
と調停委員さんに注意され、電話は切られました。
時間にして、わずか5分。
わざわざ仕事を休み、時間をかけて弁護士事務所まで足を運んだのに。
あんなに緊張して、前日も眠れなかったのに。
たったこれだけで、終わってしまったのです。
絶望の長期戦の幕開け
「じゃあ、次は1ヶ月後ですね。」
何事もなかったかのように手帳に書き込む弁護士さんを見て、私は怒りというより、深い徒労感に襲われました。
調停は、基本的に月に1回程度のペースでしか開かれません。
つまり、弁護士の「提出忘れ」という信じられないミスのせいで、話し合いが1ヶ月丸ごと無駄に延びてしまったのです。
1ヶ月後も、また同じように仕事を休んでここに来なければならない。
婚姻費用が決まるまで、なけなしの貯金を切り崩す生活が、さらに長引く。
「一体、何回こんなことを繰り返すんだろう…。」
この時、私は二つのことを確信しました。
一つは、離婚成立までには想像を絶する「長い戦い」になるということ。
そしてもう一つは、
「この弁護士、ちょっとヤバいかもしれない。」と、いうことでした。
【次回予告】
出鼻をくじかれた第1回調停。しかし、本当の戦いは「夫の主張」を聞いてからでした。次回は、調停で明らかになった夫の信じられない要求と、頼りにならない弁護士との間に生じた亀裂についてお話しします。

